王昭-その人と絵と-
[解説]
王昭さんは中国画の近代化を志し、中国水墨の伝統を踏まえながら、先づ日本画と融合する試みから出発して、特異な画風を作り出すことに成功した。
王昭墨彩画は、従来の水墨水彩とは異なり、日本画の技法と様式を縦横に駆使した重彩であって、中国画の概念をくつがえすに十分な、全く新しい近代的な中国画というべきである。
写意と写実の調和において、いささか荒っぽさが感じられるが、そのことが逆に自然との対話者である王昭さんの存在を強調している。自然や対象に所有されない、実像と虚像の間を乱舞する頑固な対決者としての個性を、画面に送信している。即興を基本とする線描に巧みであるが、決して心象的なものではなく、あくまでも具像であり、描写力は確かである。気魄のこもった「松樹」の安定感。「瀧」に見られる、数筆で山の勢いと流水・石を表現し、爆声が聞こえてくるような詩意。「向日葵」は大胆でリアリティーに富み、「水仙」は清新で水の中に初冬の香りが漂う。「桜」は気宇壮大で天下の春を告げている。
対象を極限にまで絞り込んだ両格は、通常のやさしいとか、美しいとかいうのもとは異質の、きびしく、強い世界でありながら、華麗な明るさと、奔放なゆとりに満ち満ちているのは、単純に彩色の具合というよりは、名門出身の王昭さんの大らかな性格と、美意識によるものであろう。色彩は攻撃的であり、狂暴でありながら、優雅でもある。
後半に続く(美木評論家の新聞記事より)
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